渦男のジャズ道場

八王子の音楽教室ミュージックサロンア・ミューズのサックス講師 網 渦男のブログです。 サックスに関すること、ジャズに関することなどをまとめております。(旧さきこら)

㈱グローバルのフラッグシップモデルである
『イオ セライバフリーシステムモデル(アルト)』(AS1065SF-GL)
の期間限定特別セールのご案内です。

ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、
昨年、台湾製サックス『イオ』の製造販売が
惜しまれつつも中止となってしました。

イオは台湾のジュピター社の工場の一画で生産されていた
㈱グローバルの設計によるサックスです。
近年、有名サックスメーカーが実際はほぼ中国やベトナムでの
生産に移行し、クオリティが以前と変わってしまっている
という状況(あまり詳しくはかけませんが)の中で
台湾製のサックスの評価が高くなって来ていました。

理由は2000年以降、有名なS社の職人が大量に
台湾にヘッドハンティングされた事で、あの伝統と技術が
台湾の工場に継承された事によります。

特にイオはS社のサックスの良い所を可能な限り継承し、
デメリットである音程のバラつきや抵抗の強さなどを
改善した初級~中級者にもうれしいモデルとなりました。
その品質の高さから多くのプロも愛用しているモデルです。 

私はその開発の段階(15年ほど前でしょうか)から
試作品の試奏など、関わらせて頂きましたが、
初号機はまさに『S社のそれそのもの』という印象で、
当時の台湾の技術に脅威を感じたと共に、
新時代の到来を予感させられたのを記憶しております。

さて前置きが長くなりましたが、この度、そのイオの
最上級モデルである『セライバフリーモデル』のアルトが
製造中止にも関わらず、3本ほどご紹介できます。

セライバフリーはサックスの悩みの種である
『つば漏れ』を軽減する為に改良されたモデルです。
管内に磁石で金属棒を吸着させる事で管内の水分の流れを
コントロールし、左手タンポのつば漏れを防いでいます。
 
しかし、私が特筆すべきと思う所はそこではありません。
実はこのモデルは左手パームキーの位置も変更されております。
それが高音域(High D、D#、E)の抜けを良くし、
かなり太く豊かで安定した音を出す事に成功しております。
高音が苦手な方はこれにより難なく高音域の演奏が可能になる
のではないか?と思います。実際、私の生徒さんもこれで
大きく変わりました。
まさにこの価格帯で言う事無し、大満足の楽器です。

あえて解る人にだけ解るようなそ例えで言うならば(笑)
『S社があの頃のように現在もサックスを生産していたらこうなったのかもしれない』 
というイメージです。
過剰な装飾や仕上げなどで奇をてらう事もせず、
サックス本来の設計、材質などを重視し
『ちゃんと作っている』サックスです。
ある意味『玄人ウケ』のモデルですので
サックスの良し悪しが解る人に買って頂きたいと思っております。
吹けば必ず満足はしても後悔はしないでしょう。
イオはあえてモニターや広告塔は使わず、
その品質のみで多くのプロが愛用し、絶賛するモデルです。 

イオシリーズ自体、昨年、製造中止になったので
現在このセライバも手に入れるには、
全国の楽器店の店頭在庫を当たるか、
中古を探すかしか無い希少モデルとなる状況かと思われます。
 

しかもその価格は定価307,800円(税込)のところを
216,000円(税込)で提供できる事になりました。

『~銘機が嫉妬する~』というキャッチフレーズで
発売されたイオがまさにその通りの理由で
(詳しく言えませんが)生産終了となってしまったことは
何とも残念で感慨深いものがありますが、
ぜひこの機会に幻の銘機『イオ セライバ フリー モデル』を
手にしていただければと思います。
現在残り1本となりました。 

お問い合わせ、ご購入希望の方は
musicsalon.amuse0301@gmail.comまで連絡ください。
期間は本日より2/9まで  3/13までの期間限定となります。

参考サイト
アルトのセライバではありませんが
イオのテナーの標準モデルの音源が聴ける私の旧ブログです。
http://a-muse.seesaa.net/article/77885760.html

メーカーの商品ページ(価格は消費税5%時のままのようです)
http://www.global-inst.co.jp/misc/io_saliva-free.html

メーカーカタログのページ
http://www.global-inst.co.jp/misc/io_sax_web.pdf




今日、私のサックスレッスンの受講生が一人、
レッスンを卒業した。
彼は八王子のとある六大学で国家試験の勉強に励みながら、
勉強時間の合間にと、私のサックスのレッスンを受講していた。

この度、めでたく地元九州での就職も決まり、
4月からは法律関係の仕事に就く、
所謂勝ち組の一歩を踏み出すのだ。

受講生の門出は本当にうれしいものである。
もしかすると彼とは親子ほど年も離れているので
まるでわが子のようにその喜びもひとしおだ。

入学当時からレッスンに通い始めたので
大学生活と同じく4年間のレッスンであった。

彼には私のレッスンに通わず、
自分の大学のジャズサークルに入部する
という選択肢もあった。

初めての来店時(体験レッスンの際)に
私もそれを提案したが、
彼は自分は国家試験の勉強があるので
サークルのペースに迷惑がかかるから
という事で私のレッスンを選択したのだ。

楽器も音符も初めてという
『超・初心者』からのスタートだった。
3連符と16分音符を教えるのに
『トマト、トメイト』と言っていた頃が懐かしい。

彼はマイルス・デイビスとケニー・ギャレットが好きだった。
チャーリー・パーカーも聴いたが、
もっぱら新主流派を好んで聴いていた。
そうなってくるとレッスンは必然的に
『ビバップフレーズのインストール』ではなく、
『インプロヴァイザーの育成』という事になってくる。
『Lickをプレイするな』のマイルスの言葉に従う形となるのだ。

『インプロヴァイザーの育成』とは即ち、
作曲家の育成に近いものだ。それは
音楽の3要素から始まり、12キー、和声法、
Thematic Approach Tonal Gravity など作曲にかかわる
多くの理論を学び、それを実践できるスキルを
身につけさせなければならない。

リックマンか?インプロヴァイザーか?
彼はやはり後者を選択した。

教える方も学ぶ方も後者の方が困難だと思う。
なぜならそれは反復練習により
脳と筋肉に大量のリックを記憶させるという
アスリート的なエクササイズよりも、
『センス』『美意識』『審美眼』を備えた
クリエイティブな脳みそが必要になるからだ。
勿論多くのスケールやコードを自在に
吹きこなせるスキルも必要だ。

しかし、ひと度、そのセンスとスキルが身につけば、
どんな曲にもジャンルにも、身体ひとつで飛び込んでいける
ジャズマンとしての遺伝子が注入されたと言えよう。

彼が4年間で題材として取り上げたスタンダードは
10曲ほどであったが、そこで学んだのは
10曲分のリックではなく、
様々な分析法、アプローチ、構成力である。
それを彼自身は今日のレッスンで自覚してくれた。

10曲を全てカラオケを使ってインプロヴァイズしたのだが、
そのどれもが以前のアドリブをはるかに上回るクオリティだったのだ。

彼は帰り際に
『4年間本当にお世話になりました』と
満面の笑みで握手をした。

その笑顔は4年間の満足感と達成感と
今後のジャズ人生への大いなる希望と期待の
笑顔であったに違いない。

『教材、絶対買いますので』と
うれしい事も言ってくれた(笑)。

『現実に直面し、それを分析する力を持つことが
 困難を克服し、成功するのに必要な能力だ。』
とはビル・エヴァンスの言葉だが

彼はこの4年間でその能力をしっかりと
身に着けたのだとうれしく思っている。
リックの代わりに彼が得たものは大きい。



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『絶対音感』
レッスンをしていてよく質問されるのがこの
『絶対音感』です。

『絶対音感』とはある音を聴いたときに、
その音の高さを記憶に基づいて
絶対的に認識する能力のことですが、
 
驚愕の絶対音感動画↓
 

楽器やジャズのアドリブをやる上において
この『絶対音感』が必要ですか?
とよく質問されるのです。

私の個人的な意見としては
『そんなものは要りません、有ったら邪魔かもしれません。』
と答えております。
なぜならば、そもそもサックスは移調楽器ですので
『ド』といっても実際は
『シ♭』だったり
『ミ♭』だったりしますので
実際の音名(実音)と記譜のギャップがいちいち
面倒くさいのではないかと思われます。
以前、実際に『絶対音感』の持ち主をレッスンした事が
何度かあったのですが皆さんもれなく混乱しておりました。

私自身はアルト(E♭)もテナー(B♭)もプレイしますので
E♭とB♭の『相対音感』を持っております。

以前、アルトばかりプレイしていたら
テナーの相対音感が鈍ってしまった事もありました。
ですので『継続的に使う事』が音感にとって大事なのだと思います。

またアドリブと言う点で考えると『相対音感』によって
『Any key』つまり、どんなキーでもその中でも
『Tonal gravity』(調性重力)を感じ取る事によって時に
めまぐるしく変化するドミナントモーションを意識できる
と思うのです。

『Tonal gravity』とは『Tonal center』に対する引力です。
ここではその詳しい解説は略しますが、
ある音がその調(key)のどのような位置にいるか?
という座標のようなものです。
太陽系において地球がどのような位置にあるか?
という感じですね。

私は以前(脳卒中になる以前)全く感覚的にアドリブをやっておりました。
勿論、理論やコピーも学びましたが、いざプレイするときは
『すべて忘れろ』です。

世代的に『マイケル・ブレッカー』の影響をモロに受けておりましたので
調子に乗ると『アウトする癖』も勿論付いておりました。
地球や火星にいたと思ったら冥王星や太陽系以外の場所へワープ!
なんて事もやっておりました。

スターウォーズのミレニアムファルコン号にでも乗っている気分でした。
残念ながら今はそんなリスクの高い、無責任な運転はできませんが(笑)

…重力圏を逸脱したので話を『絶対音感』に戻します。
たとえ『絶対音感』があっても、適時、『Tonal center』も
平行移動できればいいのかもしれません。

『絶対音感』を持っていない私はそれが可能なのか解りませんが。
音楽も人間社会も大事なのは『多様性』なのかもしれません。

Cという世界におけるFと
B♭という世界におけるFは
同じFでも違う役割、個性を持っているということですね。

ただし、このゲームをやる時だけは
『絶対音感』が欲しい!と私は切望いたしました。
 



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サックスの練習が脳卒中のリハビリに

以前にも少し触れた事なのですが、
ある方から、
『他の人の役に立つかもしれないのでちゃんと書いた方がよいですよ』
とアドヴァイスを受けたので改めて書いておきたいと思います。

私は2011年に脳卒中になりました。
その後遺症で『記憶障害』『言語障害』『左半身麻痺』を患いましたが、
今回は『記憶障害』について書きたいと思います。

『記憶』と言っても脳では
とりあえずメモリしておく『一時フォルダ』のようなものと
必要の為長く定着させる『保管庫』のようなものの2つがあるそうです。
『明日歯医者の予約を入れた』など直近の予定などは『一時フォルダ』です。
これは用事を済ませれば削除しても良い類のものです。
逆に『親の名前』とは『出身校』などは昔の記憶ですが、
ずっと必要で何度も思い出す必要が有るので『保管庫』に収められます。
所謂記憶の『定着』と呼ばれる状態です。

私の障害は『一時フォルダ』でした。
脳卒中後、歩けるようになって教室の業務に戻りましたが、
知人や生徒さんの名前が出てこなくなったのです。

『忘れた』という表現ではなく『出てこない』のです。
誤解の無いように説明しますが、存在は忘れていないのですよ(笑)
名前の最初の一文字が出てこないから脳内を検索できないのです。
よく芸能人の名前を『ド忘れ』する事がありますよね?あの状態です。

さらに恐ろしく感じたのは教室で電話を受けて5分以上話していると
相手が誰なのか?どんな用件で電話をかけてきたのか忘れてしまったり
と言う事が有りました。

脳みそがそんな状態でも生活のために脳卒中の3ヵ月後には
何とかレッスンを復活させたのですが、不思議と
『受講生が前回どのようなレッスンをしたか?』
は覚えておりました。
『その方の名前を思い出せなくても』です(笑)

ただレッスンをしながらどんどん5分前の記憶は消えていくので
今何をやっているかというメモを取りながらのレッスンでした。
『一時フォルダ』が5分毎に消える前に
バックアップを常に取っておかなければならなかったのです。

そのような状態から3年経った昨年2015年、
私は免許の更新のために病院へ後遺症のチェックをしにいきました。
法改正で脳に障害を患った人は医師のチェックが必要になったのです。

実は私は脳卒中の退院後リハビリは一切受けておりません。
病院の手違いでリハビリの通院の手続きをしていなかったからです。
『そのくらい自分で気づけよ』って話ですが(笑)、
当時まだ私の頭は朦朧としており、家族もいなかったので
そのまま放置の状態でした。
そのような経緯もあって担当医の方は
『厳密にテストさせてください』といい、
私はかなりたくさんの項目のテストを受けました。

結果は私も医師も驚くべきものでした。
私は2015年当時44歳でしたが、私のスコアは
健常者の30代男性の平均より上回っていたのです。

医師は私の脳のMRIの写真を見ながら
信じられないといった表情をしておりました。
脳卒中で私の右脳はピンポン玉ほどの損傷があったからです。
これがそのMRI画像です。↓
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医師は『どこかで特別なリハビリは受けましたか?』
と怪訝な顔で私に聞きましたが
勿論私は『何もしておりません』と答えました。
『それは信じられない』と首を傾げるので
私は『考えられるとしたら私の仕事は楽器の演奏です』というと
医師は『なるほど、ならば解ります。楽器は最高のリハビリです』
と笑顔で言いました。
読譜も指を動かす事もリハビリには最適だそうです。
『指は第2の脳』とも言われます。

記憶の話に戻ります。
実は音楽を演奏していると時にもこの『一時フォルダ』の機能は
常に使っているのです。例えば『調号』と言うものがあります。
ハ長調(Cメジャー)ならつきませんが、
ト長調(Gメジャー)ならF(ファ)に#がつきます。

これは楽譜の冒頭にしか記述しておりませんので
『今、ファが#の曲を演奏しているな』と
その間ずっと覚えていなければなりません。

『おたまじゃくしのこの位置がドだ』とか
『♪は8分音符で1/2拍だ』とかは
『保管庫』にある定着記憶ですが
『調合』や『臨時記号』は『一時フォルダ』の仕事です。

有名な「エビングハウスの忘却曲線」によれば
人は20分後に42%を忘れるそうです。
ト長調の曲を演奏中に最初にF#が出てくるまでほぼ20分以内でしょう。
ですから忘却の前に必ず『FはF#だったな』と思い出す事になります。
『一時フォルダ』への記憶の定着は忘却する前に
『記憶の想起』つまり思い出す事でしか為されません。

楽器の演奏は常にその記憶の定着強化の作業の連続であると言えましょう。
そしてさらにレッスンでは『ここはこうやって演奏しましょう』とか
『こう考えるとミスしませんよ』という項目が付加されていきます。

これらも全て『一時フォルダ』とその強化です。
私は奇しくも自分の仕事でそれを日々やっていたわけです。

昨今、『ボケ防止に脳トレ』とか『若年性アルツハイマーの予防に』と
様々なモノが着目されていますが、もしその人が音楽好きであれば
ぜひとも楽器を演奏する事をおススメします。
私がその証拠ですから(笑)







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最近レッスンで『ジャズのアーティキュレーション』
について解説しています。

サックスで何を持ってジャズらしいプレイか?
と考えたときに、サウンドやタイム感などもさることながら
私個人としては『アーティキュレーション』である!
と考えているからです。
グルーヴ感もアーティキュレーションが重要だと思います。

私はアーティキュレーションとは『おしゃれ度』とか『センス』
だと思います。『品格』と言ってもいいかもしれません。
自分の発する言葉に対して、どれほどのこだわりをもっているか?
だと思うのです。

ビッグバンドにおいてもアーティキュレーションが重要です。
実際の社会においても同じコミュニティの人々は
同じような言葉を使ったり、同じような喋り方をします。
ガソリンスタンドと美容院では店員の話し方は違いますよね?
訛りが一緒だと連帯感も生まれたりします。
ですからビッグバンドではセクションごとに
アーティキュレーションをあわせるのが必須なのです。
これを是非ご覧ください→https://www.youtube.com/watch?v=AZw2n90thHk

言葉はその人の出自をも表現する場合があるのです。
アーティキュレーションもジャズらしいアーティキュレーションと
当然そうでないものがあります。
最近はアマチュアジャズプレイヤーの方が
Youtubeなどに自分の演奏動画をUPしているのを良く見かけますが、
ジャズらしいアーティキュレーションでプレイしている人は
残念ながら少ないのです。

稀にですが『自称プロ』のプレイヤーや講師の方も
『おや?』というアーティキュレーションでプレイしている事もあります。
『ジャズなんだから自由だ!』と主張されるかもしれませんが、
それが『おしゃれ度』『センス』『品格』と言った所以です。

アーティキュレーションにはそれが構築された歴史や理由、効用が有ります。
歴史とは『淘汰』『洗練』と意です。

現代の所謂ジャズっぽいアーティキュレーションを構築したのは
彼のチャーリー・パーカーでした。
ですから彼はミュージシャン達から
『アーキテクチャー(建築家)』と呼ばれたのです。

それ以前のスウィングジャズには一貫したアーティキュレーションは存在しませんでした。
ホーキンスやレスターはパーカーとは違う話し方をしていたのです。

このパーカーの話し方は現代のジャズマンにも脈々と受け継がれ、
機能し、成立ています。まるで中世ヨーロッパの伝統建築のように。
そういった意味でジャズとは常に変化をしながらも
伝統と革新がバランスよく融合している。とも言えるでしょう。

話を戻しますがジャズのアーティキュレーションには
ある程度の『法則』があります。統計的なパターンです。
私はそれを『ジャズのアーティキュレーションの掟』と銘打って
レッスンしています。
近々、出版する『ジャズサックス奏法大百科(仮題)』でも
細かく解説し、エクササイズや譜例もつける予定です。
非常に長い『宣伝』でした(笑)。



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【arrange】
用意[準備・手配・お膳立]をする
協定を結ぶ、合意する、話を取り決める
《音楽》〔曲を〕編曲する

今回、『大野俊三ジャズアカデミー東京校』の正式な立ち上げに伴い、
前回5月のアドリブ講座に加えて、
ジャズ初心者でも楽しく参加できるように
ビッグバンドコースを設けることにしました。

日ごろ人にモノを教えるという生業をしている私なりに、
前回よりもより参加者に満足していただくにはどうしたらよいか?
考えた結果です。

世界的にも一流と評価されるミュージシャンに直接ジャズを学ぶという
極めて貴重な機会を、いかに有意義な時間にするか?
が私の課題でした。

参加者は老若男女、楽器も音楽経験も様々です。
共通している事は皆、音楽を愛し、
大野俊三とDavid Berkmanの作り出す世界に魅せられ、
彼らのように自分もいつか自由にプレイしたいと憧れている
と言う点です。

マスターコースはせっかく一流から学ぶのだから
ニューヨークの活きたジャズにおけるクオリティの高い情報と、
お金に換算する事のできない彼らの経験からなる宝のごとき智慧を
少しでも多く学び、吸収できるようにしたいと
内容の深さ、高さにこだわりました。
 
所謂How to的なワークショップと
一線を画したかったからです。

しかしそれと同時に、まだジャズの深みにさえ触れていない、
初心者のジャズ愛好者にも、一流の価値に触れていただきたい
という強い気持ちも有りました。
私自身が、まだ駆け出しの頃に、
幸運にも一流の音楽に触れる事ができた事で
その後の人生が大きく変わったと言う思いがあったからです。

私のサックスの師匠は

『100時間の練習よりも
1時間プロのライブを聴きに行く事だ
そして1時間ライブを聞くよりも
プロと10分でも一緒に演奏する事だ』

と教えてくれました。
今、教える立場になって
本当にその通りだと実感しております。

その教えの通り、
初心者と一流のミュージシャンを共演させられたら…。
その思いで『ジャズアカデミービッグバンド』の結成を考えたのです。

初心者ゆえに理屈や理論でなく、
感覚で一流の違いや凄さを感じるはずです。

そしてその感覚はやがて、
心の奥底に秘かに植えられた種のように、
ゆっくりと着実に根を張り、
良質な音楽経験という養分を与える事で
しだいに葉を茂らせ、それぞれの花を咲かせ、
いつか必ず、その実を結ぶことでしょう。

ジャズ初心者の最初の大きな壁であり、
ジャズのジャズたる所以はアドリブ、即興です。
ビッグバンドの演奏と言う事で即興ではなく、
楽譜をプレイするハードルに下がるのですが、
それも実際は個人個人の技量によります。
 
毎日コンスタントに練習している人もいれば、
月に1~2回しか楽器を手にしない人、
何年かぶりに楽器を演奏する人、
最近始めたばかりの人など様々です。

そんなメンバーでいい音楽を作り上げなければならない。
しかも前もって集まってリハーサルはできません。
当日合わせて、そのまま本番です。
セッションはダメな演奏でも自己責任ですが(笑)
ビッグバンドは人に迷惑がかかります(笑)

全員が持てる力を最大限に出し、
それが全て良い方向へ働いて最高の結果を出す。
これがビッグバンドもオーケストラも理想です。
会社組織や社会もそうかもしれません。

それには何が重要か?
皆のレベルを均一化すること?
違います。
みんな違ってみんないい
どこかで聞いたフレーズですが
それしかありません。
今回『まだドレミしか吹けません』
という小学生の参加希望者もおりました。

曲は『枯葉』『A列車で行こう』『Over The Rainbow』
と決めていました。
時間がなかったので既成の楽譜を使用する事も考えましたが、
楽譜の難度を考えると即日仕上げるには無理があります。

幸運な事に今回私は大半の参加希望者の
キャリア、スキルは存じておりました。

それらに合わせてアレンジすれば何とかなるのではないか?
と賭けてみました。
『賭けて』と言うのはアレンジと言うものは
実際に音を出してみないと解らないものだからです。
楽譜上、理論上、『こうサウンドする』と思っても
実際はそうは行かない事も多々あるのです。

本来アレンジ『編曲』と言うものは原曲のイメージを
忠実に表現したり、逆に新たな世界観を加えたりして
音楽的にクオリティを上げる為の作業です。

しかし今回はそうではなく
如何に短時間で演奏効果を上げ、
演奏して楽しい(アンサンブルの楽しさを感じ)モノを
作るか?でした。
その為に本来、際どいハーモニーを使いたいところを
ハモり易いドミソを使ったり、複雑な仕掛けを廃し
シンプルだけどそれがカッコイイと思うような構造にしたり
と工夫しました。
この事は私にとっても良い経験となりました。

アレンジと言うととかく凝って複雑で奇をてらう
傾向性になりがちなのです。
まるで自分の技巧をデモンストレーションする
ミュージシャンのように。

シンプルさの追求。
これは今の私の命題となりました。
プレイでもアレンジでも。

大野俊三氏のいた伝説のバンド、
ギル・エバンスオーケストラは
シンプル且つ斬新です。

勿論ギルのアレンジのようにはできるはずもありませんが
何とか90分の練習で3曲仕上がりました。

ドレミしか吹けないといっていた小学生は
1オクターブ演奏できるまでに成長して参加してくれました。
彼には『枯葉』のソロパートをドレミだけで作ってあげた結果、
堂々と立派にソロを成し遂げました。

それを聴いていた彼の5歳の弟は記念撮影の時に
兄のトランペットをぶうぶうと吹いて皆を笑わせてくれました。
兄に次いで弟も立派なプレイヤーになるかもしれません。

今日アカデミーに参加した皆様の心に
大野俊三という種は確かに植えられたと確信いたします。
私の使命はその皆様に今後も様々な機会で
『良質な音楽』という養分を与え行く事かと
感じております。

まずは11/1八王子いちょうホールで
大野俊三ジャパンツアーの至極の演奏を。
ここまで読んでいただいた貴方は
是非来てみたくなりましたよね?(笑)

こちらをクリック→チケット販売サイト 





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町田のIn To The Blueに着いたのは、
22時になろうかとしている頃だった。

私は仕事を早めに切り上げ、
横浜線に飛び乗った。

大野俊三ジャパンツアーの関東圏が
今夜、町田からスタートするのであった。

私は大野氏の東日本の興行の担当として、
メンバーや関係者に挨拶がてら、
大野氏に会いに行ったのだ。

線路沿いの一本道を歩いて店に前に来た途端、
名月の夜空をバリバリと切り裂くような
トランペットの音と、
ビルの鉄骨にさえズシンと鳴り響いてるかのような
ドラムの低い音が聞こえてきた。

『たいそう盛り上がってるな。』
そう思って私はエレベーターに乗った。

店のドアを開けるとそこは音の洪水だった。
嵐と言ってもいい。

とにかく店中に轟音が鳴り響いている。
マンガで描いたら擬音語で
コマが埋め尽くされるほどだ。

バタバタ、ドタンに
ボコボコ、ジャンジャンと
嵐のようなドラムの雷雲を
バリバリとトランペットが稲妻の様に引き裂いて
音の光線を縦横無尽に放っている。

『なんだこれは。』
私はここ何年も大野氏の演奏を
目の前で見、聴いてきたが、
こんなのは初めてだ。

マイルスの‘Four' & Moreの現代版か思うほど
アグレッシヴで力強く。

ブレッカーブラザーズ時代のマイケルのように
難解なフレーズを洪水のごとくあふれさせ。

時に鬼気迫って火を噴くショーターのような、
圧倒的なエネルギーとインパクト。

それらの例えを用いても、
まだまだそのサウンドを物語るには
到底、例え難いものだった。


ともかく、今宵の大野俊三は違っていたのだ。

でももしかしたら私が知らなかっただけで
元からこのくらい凄かったのかもしれない。

あまりに強烈だったので終ってからベースの古木君に
 
『今日の俊三さん、ヤバイね。』
 
と言ったら
 
『今日はツアー中で特にすごいです。』
 
と言っていたので本当に今日は凄かったのだろう。

『これが大野俊三の真骨頂だったのか。』
私はそう思った。

60歳を超えてこのように若々しく、力強く、
輝いて、堂々とした獅子吼のようなトランペットを吹く
プレイヤーを大野氏の他に私は知らない。

11/1は是非、大野氏のプレイを体験すべきである。
ファンであるならば今の大野氏を聞き逃すのは
はっきり言って損である。


カルチャーの語源は『農業、農耕』を意味する『agriculture』ですが、
人類が狩猟生活から『農耕生活』というステージに移った事が
『文化的』進歩、進化である。ということなのでしょう。

さて、狩猟にも多少、想像力は必要ですが、
本能なので脳幹と小脳で事足りるわけです。

それが農業となると、何か月もしくは1年先の
作物の取れ高を計算して作業するわけです。
今、現実に無いものを想定し、臨場感を感じながら
より効率的に成果を得られるよう工夫する。
 
まさに未来の為の現在を選択しゆくという
非常に抽象度の高いことを人類はやるようになったわけです。
 
そのおかげか脳は大脳辺縁系や前頭前野が発達し、
脳は感覚や計算、感情、言語、運動、想像性、創造性など
多岐にわたる物事を処理するようになりました。
 
そして、それらにネットワークを張りめぐらせ、
統括し、コントロールする機能が発達したのです。
それが『意識』です。
10年ほど前まで『心』と呼ばれていたものです。
 
高等な動物にはある程度の意識があると言われておりますが、
人間ほど高い意識を持った動物は地球上にいないと思われます。

話を『culture』に戻します。
人間は狩猟生活だけでもある程度は生きておりました。
しかし、農耕生活に切り替えた人類が生き残ったのです。
文化は人間性の発露です。

現代を生きる我々にとって音楽や美術、演劇などの芸術は
必ずしも生活に不可欠ではありません。
 
狩猟だけでも生きていけたように、
芸術無しでも生きていけるのです。
 
私は音楽を生業にしていますが、
1か月間、音楽と無縁に生きている人なんてザラにいると思います。

今日、私がプロモートする大野俊三のコンサートの
ポスターとチラシを持って宣伝活動に行ってきました。
 
商店街を歩きポスターの掲示やチラシ置いてもらえるよう
お願いするのです。

反応はその町やお店によって様々です。
 
『お、音楽かい?誰だい?へぇージャズか、いいよ好きな所に貼ってきな。』
 
『?知らねぇな。ダメダメそういうの貼らないんだよ。』
 
そのお店の方がたまたま音楽が好きだったりすると
貼ってくれたりしますが中々難しいものです。
 
でも以前に断られた所にまたお邪魔して、
信頼関係を築けるようになれば
貼ってくれたりすることもあります。
地道ですが、嬉しいものです。

何年か前にこんなことがありました。
 
私がある商店街のお店を一軒一軒お願いして回っていた時に、
 
『私は音楽なんか聞かないよ。ダメダメ悪いね、帰ってくれる』
とすぐに断られました。

『こんな人にこそ音楽の素晴らしさを解ってほしい』
そう思って私はそこで粘りました。
私は若いころ営業をやっていたのです(笑)

『あら、音楽を聴かないなんてもったいない、
せっかくですからこの機会に一流を聴いてください』
 
そう言って私はチケットに赤ペンで『ご招待』と書いて
その婦人に渡しました。

結局、ポスターはダメでチラシだけ受け取って貰いましたが
そのチラシは私の自作で大野氏の波乱万丈の人生が
びっしり書いてありました。
 
『これだけでも読んでほしい』
 
そう思って渡したのでした。

そのコンサートが終わって、出口でお客様をお見送りしている時に
小奇麗におしゃれをしたご婦人がロビーから私に手を振っておりました。
 
招待券を渡したご婦人でした。
お店ではエプロン姿だったので私はすぐに気付かなかったのです。
 
『ちょっと~、生まれて初めてコンサートなんて来たけどすごいじゃないよ
私、興奮しちゃったわ、今でもドキドキして何かとても元気になったわ』

ご婦人は目をキラキラさせて私の手を握って離しません。
 
『もっと早くにこういうの来ておけばよかったわ。
死ぬ前にあと何回来れるかしら』
 
『何度でも来てください』
 
『お兄さん、また教えてね』
 
『はい、必ずお誘いします。』

音楽のプロモートというのは荒れ果てた人の心を
『耕す』仕事です。



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私のようなポンコツミュージシャンでも
今までの人生でちょいと自慢になるエピソードというものが
ひとつや二つある。

それはたしか1995年か96年の事であった。
大人の事情で具体的なことは明かせないが
ある非公開のイベントでのセッションで
なんとハービーハンコックが来る『かも知れない』
という情報が入ったのだ。


しかもハービーが何時に会場に到着するかが
時間が読めないので『つなぎ』として前座演奏をして欲しい。
との事であった。

本来は私の母校のサークルに来た依頼だったのだが、
現役生が『とてもじゃないけど受けられない』と言ったのか、
OBの私達が『俺達にやらせろ』と迫ったのか記憶が確かでないが(笑)
結局、今は全員プロとなった私の同級生の友人3人と現役生バンドとの
合同で前座をやる事になったのだ(笑)

当時の我々の演奏クオリティを今考えるとぞっとするが、
『ハービーの前座だから観客を温めておく為に…』
と短絡的というか、とんでもない発想をして、
なんと、ハービーの曲を何曲か演奏したのであった(笑)
怖すぎて何の曲を演奏したかも記憶から抹消されているくらいだ(笑)
若気の至りにもほどがあるというものだ。

ハービーの登場を期待していた観客に対して
アマチュアに毛が生えたような前座バンドが
ハービーのヒット曲をドヤ顔でやり倒すのである。
地獄絵図に等しい(笑)

程なくしてハービーが到着、
ホストのプロミュージシャンによるセッションが始まった。
メンバー全員の名前はこれも大人の事情で明かせないが、
実はそのときのベースはポール・ジャクソンであった。
ヘッドハンターズのオリジナルメンバーであった彼は
実は日本に住んでおり、このセッションに呼ばれていたのだ。
私はその時初めてポール・ジャクソンを見たのだが、
そうとうな巨体でベースがまるでウクレレのようだった。

セッション中、彼は何十年ぶりかのハービーとの共演に
エキサイトしたのか、ベースの弦をバチバチ切ってしまった。
それでも残った弦で器用に演奏していてさすがにプロだと
感心しつつ、我々前座バンドのベーシストに
『おい、そのベース渡して来い!』と言って
ポール・ジャクソンにベースを渡した。
彼はこれまた器用に演奏しながらベースをチェンジし、
セッションはそのまま続いた。
サプライズゲストなのにハービーは本当に楽しそうであった。
セッション終了後、巨体のポールはマイクを握り、
溢れる涙で顔をくしゃくしゃにしながらこうスピーチした。

『私の人生においてハービーと共演できたのは、もう過去のいい思い出であったが
まさかもう一度、ハービーと一緒に演奏できるとは思わなかった、今は小さなクラブで
細々と弾いているが、音楽を続けていて本当に良かった。今日、ここに呼んでくれた友と
今日のお客様とハービーに心から感謝します!私は一生、音楽を続けます!』

感動的な出来事だった。
ポールとハービーはガッチリとハグしハービーはポールの大きな背中をたたいていた。

それからしばらく月日が流れた1998年。
CDショップに《Return of the Headhunters 》というCDが並ぶ。
ヘッドハンターズがオリジナルメンバーで再結成されたのだ。

ワールドツアーも敢行され、往年のファンも、
昔を知らない若いジャズファンも大絶賛であった。

今考えると、あの非公開セッションがキッカケだったのかもしれない。
ハービー・ハンコックと言う人はそういう人なのだ。

↓の動画でうれしそうにベースを弾くポール・ジャクソンが見れる






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この夏の映画では『シン・ゴジラ』が話題だ。
7/29の公開から多くの人が高評価をしている。
特にエヴァンゲリオンを指揮した
庵野秀明が監督を務めたと言う事でも注目されている。

何でも今回のゴジラはフルCGと言う事で
日本映画でハリウッド映画並みの映像技術らしいので
ぜひ映画館で観てみたいものだ。

最近は日本映画でも多くCGを使用するようになったが、
庵野監督と同じアニメーターの押井守氏は
『全ての映画はアニメになる』と言っていた。

確かに彼の黒澤監督のように
『今日の空はダメだ』と何日も撮影を延期していたら
予算が持たない。青空も、爆発も、怪獣も
全てCGで作りこめるのだからその方が手っ取り早いだろう。

庵野監督は
『昔のクリエイターは情熱や感性で作品を作っていたが
今は情報をコントロールしている時代だ』
と言っている。
アニメやCGならばそれが可能だ。
実写は予期せぬ事が起こる。景色や天気、俳優の演技など、
作る側の思惑と違うところがメリットでありデメリットでもあるそうだ。

アニメやCGはさながら打ち込まれたDTMのコンテンツのようだ。
最近のDTM音源はリアルのそれと違いが判らないほど進化している。
一方、生身のミュージシャンのスタジオ録音は
録音、編集技術が進んでいるとはいえ、人間の作り出す音楽の
良いところはまだ評価されている。
いわんやライブをや。である。

私は音楽が人を感動させるのは同じく
『情報量』だと考えている。
サンプリング音源のサックスの音は未だに無機的で
単体で聴けばすぐに本物ではない判る。
フルートやトランペットは難しいかもしれない。
わざとノイズや息の音を含んだ相当良い音源が開発されている。

各楽器の音色的な情報量、
そして映画で言うストーリーに当たる旋律という情報量、
背景に当たる楽器編成やテンポやビートなどのアレンジの情報量。
それら全てが相まって聞く人に感動を与えるのではないだろうか?

音楽にも情熱や感性は必要なのは言うまでもないが、
ビジネスとしてお客様からお金を頂くには満足感や感動というものを
提供し続けなければならない。

ゆえに自分のコンテンツ、作品の情報のコントロールは
アニメーターや映画監督と同様注意を払わなければならないと
私は感じている。
情熱から情報のコントロールなんて
まるで政治の流れの話のようだが、
ミュージシャンが食っていく為には考えなければならない事だと思っている。


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