前回の記事でジャズのアドリブのマスター法に関して
①Lick manになるにはフレーズを沢山覚えれば良いと書きました。
もう少し詳しく説明するとあるコード進行に対して運用可能なフレーズを大量に覚え、
そのコード進行に従って適時使用可能なフレーズを紡いでプレイしていく
と言う事です。
これは簡単なようですが実は自然にフレーズを連結させていくには
それなりの、というか気の遠くなるような練習が必要です。
1文1文は完成されていても、ただ単にフレーズを連発してはストーリーがつながらず、
バラバラな散文になってしまうからです。ですからLickで紡ぐにしても、
前後の流れ、必然性、ソロ自体の構成を考えつつパーツを組み立てるようにすることで
クオリティを挙げていくわけです。
フレンチのコース料理のように一つ一つは完成されつつも一貫した流れ、
コンセプトがあるようにソロが発展していけば素晴らしいソロになるはずです。
ですのでLick manスタイルには構成美、様式美のセンスが必要と言えます。

さて一方Improviserになるにはどうすればよいのでしょう?
Lickは既存の言葉の使い方ですがImproviserは『言葉』そのものから
想像していかなければなりません。
例えば一般にDm7→G7→Cと言うコード進行なら
『このような既存フレーズがあるだろう』
という皆が持っているリストの中から選択してプレイするのではなく、
『一般にはこんなフレーズがあるが自分は本当にそれを伝えたいのか?』
と言う問いを瞬間瞬間、己に問うていかないとなりません。

オーネット・コールマンのように初めからImproviserだった人は
そのリストすら所持しようと思わず、
純粋に素のままでプレイしていたかも知れませんが。

新主流派と言われるImproviserは恐らくは当初はモダンジャズの語法である
ビバップでLickによる手法を一度は学んでいたりするわけです。

そもそもLickによる手法が発展したのは1940年代後半からの
チャーリー・パーカーを中心としたビバップのムーヴメントにおいてです。
ビバップは『for musician』の音楽です。リスナーは置いてけぼりです。
即興の技比べなので如何に高速で難解なコード進行を攻略できるか?
が勝負のアスリート的な音楽です。

後に新主流派の中心人物となるマイルズ・デイヴィスも当時その渦中にいました。
しかし、マイルズは即興を追及したビバップが成熟するにつれそのアドリブの内容が
その機能性を重視した為に機械的に単調になっってしまった
(合理化の追求により皆同じようなフレーズをプレイするようになった)ことの反動で
1949年に白人達(主にレニー・リスターノ学派)によりメロディアスでリズムを控えめにし、
理知的なクール・ジャズを誕生させます。(参考⇒“Birth of the Cool”)

さらにマイルズは1951年には“Dig”と言うアルバムでソニーロリンズや
ジャッキー・マクリーンを迎え、ビバップの新しい形『ハード・バップ』
と言うスタイルへと進化してきました。この頃はまだマイルズ自身、
ソロでLickを用いてはいますが、ビバップの頃と比べると早くもLickの呪縛から
のけ出ようとしている演奏を確認する事ができます。


その後、ジョン・コルトレーンを迎えたマイルズ第一次黄金クィンテットの
歴史的な華々しい活動を経て1958年にはセクステットによる『マイルストーンズ』
を吹き込み、これが歴史家の間では『モードジャズ』の誕生とされています。


モードジャズとはコードでなくモード『音律』によってアドリブを生成していく手法で
コードにフレーズが紐付いているビバップの手法は余り役に立ちません。
そもそも美しいメロディをリリカルにプレイしたかったマイルズはこの手法を好み、
ギル・エヴァンス、ビル・エヴァンス、コルトレーンと共に発展させました。
この時点でマイルズ自身は曲やアルバムにもよりますが、
ほぼLickによらないプレイに切り替わっております。

“Learn all that stuff and then forget it.” (すべて学び、そして忘れろ。)

これは次々にスタイルを変え、彼のスタイル自体がジャズの歴史となったとまで言われた
マイルズの名言です。

またLickを捨てた彼を非常に良く表したこんな言葉もあります。

Don’t play what’s there, play what’s not there. 
Don’t play what you know, play what you don’t know. 
I have to change, It’s like a curse.

(そこにあるものではなく、ないものをプレイしろ。
知っていることではなく、知らないことをやれ。
変化しなければいけない。それは呪いのようなものだ。)

このようなマイルズの生き様から
真のImproviserになるべき道が見えてくるのかもしれません。
私自身はLickが使えなくなったので今自分が何を表現すべきか?
というフィルターの他にもうひとつ、
『未だ不自由な左手でなにが表現できるのか?』
というフィルターがかかってしまうのですが(笑)
私が教えているようなアマチュアミュージシャンの方に対しては
フレーズはシンプルに。ニュアンスは豊富に。と申し上げております。
ビバップがお好きなら自分がどれだけ速いテンポで難しいコード進行を
クリアできるか?という事をターゲットにしてもかまいませんが、
『無理せず即興を楽しむ』のであれば
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のように単純な言葉で言いたい事を伝えればよいと思うのです。
一生懸命にLickを覚えて、左脳をフル回転させてコードに必死で応戦するよりも
言いたい事をいいましょう。
その際にマイルズのようにニュアンスをしっかりこめてプレイしましょう
相田みつをもゴシック体でプリントアウトだったら味がありません。
肉筆だから伝わるのでしょう。
その為にいろんなプレイヤーのニュアンスを
ウェルニッケ野をフル稼働させて『模倣』して、
表現方法、奏法を学びましょう。
名セリフも棒読みやロボット音声だったら台無しです。
次回はそのようなニュアンスのコピーについて書いてみたいと思います。



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