前回のあらすじ

ひょんなことから音楽活動に復帰できた私は
大手音楽教室の講師として70人以上の生徒を受け持つ事に。
そこで『アドリブをやってみたい』との要望に
アドリブ習得のノウハウを手探りながら
試行錯誤を繰り返す日々を送っていました。

アドリブを習得しようと思っても
多くの人は『どうすればよいのか』が解りません。
やる事が膨大すぎて何からどう手をつけてよいか解らないでしょう。

私も初めはそうでした。
闇雲に理論書を買って、読んで、挫折して、
コピーして、使えずに、挫折しての繰り返し(笑)。
大量にコピーをする事で感覚的に
アドリブは出来るようになってはいましたが、
自分が出来る事と教える事は別物です。

教える側になったら体系化して
誰にでも通用する再現性が無くてはなりません。

私はヒントの1つとして、
『プロはどのようにアドリブをマスターしたか?』
を調べてみようと私は思いました。

多くのプロの方を調べてみると、
『○○さんに弟子入りした』という
『徒弟制度』のパターンが非常に多かったのです。

しかもある程度の長期間、厳しい課題を与えられ、
訓練されるというパターンです。

これはサービス型レッスンには向きません。
受講生は弟子でなくお客様、
『顧客満足度』というのがKPIとなりますから
スパルタで鍛える事など無理です(笑)
30分(当時は30分が1レッスンでした)で
悩みを解決し、満足してもらい、達成感を
感じさせなくてはなりません。

そうすると目標が下がるので1レッスンが
人によっては『牛の歩み』どころかカタツムリくらいになってしまいます。
そんなレッスンが続いてモチベーションを維持して貰えるかは、
講師として悩ましい事でした。
先がなかなか見えない闇では挫折してしまいます。


『アドリブなんか教えないでジャズの曲だけレッスンしておけばいい』
と言う声も有りましたが、アドリブをやりたい人にとっては
それはすり替え、誤魔化しになります。
いまだにそういう教室は多いようですが。

『誰でも、しかも短期間で』
アドリブをマスターできるノウハウは本当に無いのか?
これは私のミッションでした。

3年後、大手をクビになった私は今の教室を立ち上げます。
よりジャズ色を打ち出した教室にした事もあり、
ジャズ好きの人が集まりました。

その頃には私自身がアドリブの習得について
ノウハウはある程度、検証され、整理されておりました。
ここでも何度か触れておりますが、アドリブ習得には
大きく分けて以下の2通りがあると分類しました。

1つは慣用句、常套句である『Lick』を多く記憶し運用する事。
これはBebopの曲のコード進行などには最適です。

『Lick』の多くがBebopで多用されるツーファイブ的な
進行に対するものですので、暗記さえすれば即戦力です。

ジャズの共通語とも言えましょう。
例えばこんなものです↓

ジャズ道場 『ツーファイヴフレーズのアナライズの巻』



もう1つは本当の即興、もしくは
『Lick』ほどシェアされていない『独自の言語(文法)』を持つこと。

これらはコード進行のパターンと言うよりも
コード単独に対してのアプローチとも言えるかもしれません。
例えばショーターのフリジアンなフレーズなどです。
※マイケル・ブレッカーのコンディミ1発フレーズなどは
もうみんなやるので『Lick』と言っていいかもしれません(笑)。

まず『Lick』に関して言えば、『Lick』だけで
アドリブを乗り切るのは大変です。
沢山覚えなければならないからです。
『Lick』に当てはまらないコード進行には使えませんしね。
ですから『部分使用』が現実的なところでしょう。

ではもう一方の『即興』ないし、『独自の言語』の構築は?

これには最低限の理論的情報知識が必要です。
深く膨大な理論は必ずしも要りません。
最低限で構わないと思います。

私はこれらを最低限の知識を
コード、スケール、ダイアトニック、ドミナントモーション(Ⅱm7Ⅴ7を含む)
くらいでよいとしています。
※拙著『ジャズ道場~初級篇~』の範囲です。

余裕があればオルタードテンションを含んだコードや
ホールトーン、オルタード、メシアンの第5旋法(MTL)などの
特殊なスケールを仕入れても良いでしょう。
※拙著『ジャズ道場~中級篇~』の範囲です。

その他、ヘキサトニックやトライアドペア等の概念は
All The Things You Areや、Stella By Starlightが
目を瞑ってでも出来るようになってからで良いと思います。

まずはシンプルに考えてシンプルに表現する事です。
例えば以下は『枯葉』の最初の4小節です。

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①は『Lick』、②はスケール、③はコードのみでの
アドリブ例です。
②や③でもニュアンスさえきちんと付ければ充分カッコイイのです。
特に③は私がレッスンで『高倉健奏法』と名付けた、
言葉数の少ないスペースを活かしたアプローチです。

実は大半のアマチュアプレイヤーはアドリブになると
『とにかく何か演奏しなくてはならない!』
という謎の焦り、義務感でやたらめったら音を出す傾向にあります。

『何を表現したいのか?』すら定まっていないのに
『とりあえず何か音を出す』ことばかりに追われてしまいます。

私はいつも『設計図』を描きましょうとレッスンで力説しています。
図面も無いのにいいアドリブの構成など困難です。

図面に『ここは○○なフレーズ』『ここは△△なフレーズ』と
定まっていれば、その発注に応じたフレーズを
脳から発送すればいいのです。


なんと簡単な仕組みでしょう!
アマチュアこそ、このシステムで作文を書くように
アドリブを構成すべきと思うのです。

『Lick』でのプレイは暗記が得意な人は向いておりますが、
私のように苦手な人は大変です。
また常に『覚えている事をプレイする』という記憶に縛られた
プレイになりがちです。
本来、ジャズは自由なはずで、みな違うはずです。
あえてみんなが覚えているフレーズを覚えてプレイしたければ
それでも良いですが『人と違う事がしたい!』と言う人は
このやり方の方が向いています。
ただし、『シンプル』は裏を返せば『幼稚』になりがちですから
表現方法や、構成にはセンスを磨かなくてはなりません。

作文や日記が書ければアドリブができる!

これが私の到達した結論でした。
私の教本『ジャズ道場』にはこんな一文が書かれております。
『アドリブ挫折者ゼロへの挑戦!』
これは私の本気のミッションなのです。