私はサックスを始めたばかりの学生の頃、
特にレッスンなどには付いていませんでした。
いわゆる独学です。

そのこと自体、非常に後悔した時期もありましたが、
『教える仕事』をするようになって
その考えは変わりました。

なぜなら独学で『遠回り』したおかげで、
大抵の間違った奏法、練習法、考え方を経験したからです。
 

プロのプレイヤーとして成功したければ、
レッスンについて人よりも早く上達をすべきですが、
レッスンプロとしては経験が足らない事になります。

正しい知識、情報を提供する事と、
どうして間違った方向へ行ってしまうのか?
の原因を突き止めることは似て非なるものなのです。

人から安易に手に入れた情報と
自分の経験から得た情報は違います。

イチローの言葉を借りればそれは
『深みの無い』情報だからです。

例えばサックスの演奏中に高い音を出そうと
マウスピースを噛んでしまうという癖があるとします。

そこで『噛んではいけません』というアドヴァイスをする講師は
プロでは有りません。
そんなことネットでタダで手に入る情報だからです。

本来、講師は
『どうして噛んでしまうのか?』
を考えなくてはなりません。
もっと言えば
『この人はどうして噛んでしまうのか?』
から考えなくてはなりません。

なぜなら『噛んでしまう理由』なんて無数にあるからです。
そしてその原因、理由がわかってそれを指摘しても
簡単に改善しない事もあるのです。

或る場合は『体、筋肉の癖、習慣』だったり、
或る場合は『マインドブロック』だったりです。

体は意識的にも無意識的にも脳の命令で動いています。
正しい情報を与えたところで脳の回路を
すぐに修正できない事もあるのです。

ですから外から見て同じ状況であっても、
『噛まないで』とそのまま伝える人もいれば、
『そこは「ア」と発音してください』と言う人もいれば、
『飼い猫を思い出してください』と言う人もいれば、
『あのCDのあの音をイメージしてください』と言う人もいるのです。

相手の脳にある『パラメータ』を如何に探り当てるか?
がレッスンプロの腕の見せ所なのです。
伝えたい相手の脳にある概念で例える事が
正確に早く伝えるコツとなります。

これは企業のプレゼンテーションも同じでしょう。
ジョブズはそれが上手でした。

『伝える力』はプレゼンもレッスンも演奏も
同じだと私は思っています。