このブログでも何度か取り上げていますが、
私は『お笑い』が大好きです。
単に笑いたい、という気持ちもありますが、
『知的好奇心』が刺激されるので好きなのです。
音楽とお笑いは似ています。
どちらも人の想像力を掻き立て、楽しませるからです。

先日、ネットでビートたけしさんが
『唯一、負けを認めた芸人』
と言う事で『明石家さんま』さんの名前を挙げていました。
その理由にたけしさんは
『あのアドリブには勝てない、オレがツッコミに回るしかなかった。』
『人のミスも、自分のミスも、笑いに変えてしまう。』
と告白しておりました。
まさにさんまさんは『お笑いファンタジスタ』なのですね。

そもそもたけしさんとさんまさんは実は
『オレたちひょうきん族』が初共演だったそうです。

『オレたちひょうきん族』は当時最高視聴率50%を記録したTBSの「お化け番組」、
ドリフの『8時だョ!全員集合』を超えるものを
とフジテレビがあえて視聴率ノルマを廃し、
『制作者が作りたいものを作る』と大胆な路線変更をして出来た番組でした。

たけしさんの証言によれば、
『ドリフは入念にリハーサルされたコントを生で見せるもの。』だったので
『オレたちは真逆をやった。コントのほとんどはアドリブだった。』そうです。

そこでさんまさんの絶妙に繰り出されるアドリブに対し、
本来は『ボケ』であったはずのたけしさんが
『バカヤロウ!』と『ツッコミ』に回るしかなかったワケです。

さんまさんもすごいですが、
それを瞬時に『ツッコミ』に切り替わって
笑いを完成させたたけしさんもすごいですね。

そのたけしさんも負けを認めた『お笑いモンスター』のさんまさんと
11年半もアドリブトークを続けた人がいます。

そう。タモリさんです。
タモリさんの『笑っていいとも』でこの二人は
「タモリ・さんまの雑談コーナー」
→「タモリ・さんまの日本一の最低男」
→「タモリ・さんまの日本一のサイテー男」
→「さんま・タモリの喋っちゃいまホー」
→「さんま・タモリの笑いごっちゃおまへんで」
→「続・笑いごっちゃおまへんで」
→「さんま・タモリのおいしいんだかだぁ〜!!」
→「タモリ・さんまのんなアホな!」
→「タモリ・さんまのなんちゅうこというの!」
→「タモリ・さんまの狼がきたぞ〜!」
→「タモリ・さんまの日本一のホラ吹き野郎!」
→「タモリ・さんまの何はともあれ」
→「タモリ・さんまのもう大人なんだから」
→「タモリ・さんまのもう大人なんだからネ」
→「タモリ・さんまのもっともっとしゃべらせてよ!!」
とコーナータイトルを変えながらも11年半も
アドリブトークを続けていました。

このコーナーは全くの雑談のような内容で、
タモリさんの『最近どぉ?』などという
『仕込みネタゼロ』のところから始まる即興です。

たけしさんをツッコミに回らせたボケのファンタジスタ、
さんまさんに対してタモリさんは
『髪切った?』とか『オシャレなシャツだね』とか
『疲れてない?』といういかにも日常の雑談的な
ネタを『フリ』ます。

この『当たり前な日常』の『フリ』を
さんまさんが話を盛りに盛って、非日常の『ボケ』にまで発展させ、
タモリさんが『んなワケない。』と『ツッコミ』を入れて
日常に下げる(オチをつける)のか?

これがこのトークの見所だったわけです。
二人の日常ネタのよるコール&レスポンスでオチにいたるので
まるでブルースのようです。

そういう意味で私は
さんまさんとタモリさんのトークを
ブルースセッションを聴くような気持ちで
ワクワク見ていたように思います。

このようにお笑いのスタイルは時代と共に、
ガッチリ台本通りのコント(ドリフ)から
ゆるい台本からのアドリブコント(ひょうきん族)に移行し、
オールアドリブのフリートーク(いいとも)で
頂点を極めたように思えますが、
ダウンタウンはこのスタイルにさらに『縛り』を加えます。

そうです。『ガキの使い』のハガキによるフリートークです。
ここでは、いいともでタモリさんがやっていた『フリ』が、
視聴者ハガキからの『無茶ブリ』へとハードルが上がります。
『上がった』分だけ『下げ(オチ)』への落差があり、
笑いも大きくなるのですが、リスクも当然高くなります。

制約されたフリなので毎回が大喜利のようです。
この『ガキ使い』のトークは
いいともの生のフリートークと、
昭和の爆笑王萩本欽一さんが『欽ドン!』で用いた
『視聴者からのハガキ』からのアドリブコントの手法をミックスしたスタイルです。
アドリブコントはダウンタウンはすでに『ごっつ』で実験済みでしたので
『視聴者からのハガキ』からのアドリブトークにしたのでしょう。

毎回、視聴者ハガキからは
『昔、松本さんは全速力の新幹線に飛び乗ったと聞きましたが~』
というようなありえない『フリ』があるのですが、
松本氏はその『非日常』の縛り(緊張)をそのまま受け入れ、
さもそれが『日常(既知)』であるかのように振舞いつつ、
いつの間にか、聴く人をカフカのような『非日常』の世界へと誘い、
そこでもう1つ、エピソードや山場を作って、緊張を高め、
浜田氏のツッコミによって一気に『日常』へと『オチ』るという
高度な手法を常に成し遂げていました。

この、日常→非日常→日常が
緩和→緊張→緩和という『笑い』のメカニズムなのですが、
私はこれがジャズの演奏に似ているように思います。

ジャズの演奏は通常、
テーマ→アドリブ→テーマというフォーマットで演奏されます。
テーマはスタンダードであれば既知です。
アドリブは未知です。
既知→未知→既知。

お笑いもジャズも
日常から非日常への冒険、転換で
未知によるドキドキワクワク感、緊張感が高まり、
最終的にテーマ(日常、既知)への回帰の安堵感へと
解決する現象です。


いいとものさんまさんとタモリさんのフリートークが
ブルースセッションだとすると、
ダウンタウンのフリートークは
無茶ブリジャムセッションかもしれません。
なのでダウンタウンの方がリスクが高い分だけ
ドキドキ、ハラハラとスリルがあるのです。

松本氏がフリートークのスキルを磨くために
毎日欠かさず『落語』を聴くと言っておりました。
体に笑いのフォーマットを叩き込んでいるのだと思います。

ジャズプレイヤーもジャズの名演だけでなく、
クラシック音楽や映画や、演劇にも触れるべきだと
痛感しております。