私が言語のようにジャズのアドリブを教えているのには幾つか理由があります。
今日はそのことについて書きたいと思います。

まず1つに『Lickを憶えないとセッションに参加できない』というハードルをなくしたいのです。
ジャズのアドリブ教本を読み進めたり、レッスンに通うと、初歩的な理論の次に
『ツーファイブフレーズ』なりのLick(常套句)やコードに対するLickを憶えなさい
とフレーズ集なるものが登場します。レッスンも教本もその方が楽です。
それを受講者や読者が暗記してプレイできればお手軽なジャズアドリブの出来上がりです。

まるで『これさえ憶えれば安心!英会話必須100フレーズ!』みたいなノリです。
我々も中学高校でテスト前にたくさん憶えましたよね?
あれで英語が話せるようになりましたか?
答えは『No!』です。

何%かは話せるようになった人もいるかもしれませんが、
『構文を憶えただけ』ではまず無理でしょう。

『旅行英会話』くらいならコミュニケーションできるかもしれませんが。
セッションでスタンダードのソロのプレイにはLickは果たして何個必要でしょうか?
そんなの全部憶えるの大変です。挫折する人もいるでしょう。
『フレーズをたくさん暗記しないとアドリブは出来ない』
という常識、思い込みを私は打破したいのです。
だってアメリカ人の子供は構文なんか暗記していなくても英語は話せますから。

次に『自分を自由に表現して欲しい。』からです。
ジャズには悲しい曲もあれば楽しい曲もあります。
Lickはコード進行に紐付いていますから、曲想がどうであろうと関係ありません。
悲しい曲のDm7|G7と楽しい曲のDm7|G7で
同じフレーズをプレイしてしまうかもしれません。
プレイする理由は『憶えているから』とか『練習したから』であって
『悲しい』『楽しい』という曲想や曲の世界観、自分のハートとは別です。
ジャズとは自己表現ですからたとえ拙くても
自分の言葉で話すべきと私は考えます。

3つ目に他のジャンルやモードジャズにも対応できるスキルを養いたい。
これはテクニカルな話になりますが、
Lickによるプレイはコードにフレーズが紐付いています。
この手法はジャズに良く使われるコード進行のパターンには強いのですが、
そうでないポップスやロックのコード進行には
フレーズの引き出しをあまり持ち合わせておりません。

ましてやコード進行が存在しないモードジャズの即興においては
アプローチに困ってしまいます。
暗記したフレーズは無くとも、スケール1つから自分の物語を語れるスキルがあれば、
モードジャズにおいても自由な即興が出来るようになるはずなのです。

このような点から私はLickのインストールでない、
音の言語化によるアドリブの習得法を遠回りに感じるかもしれませんが、
子供が少しづつ言葉を獲得していくように
ジャズ語、音楽語を学ぶ方法を推進しているのです。