さて今までのシリーズでジャズにおける8分音符のバウンスが
時代により変化していったことを述べました。
ざっくりとまとめるとこんな感じ↓。

①1920年代アーリージャズ→チョイ跳ね(For Marching)


②1930年代スウィングジャズ→3連符(For Dancing)


③1940年代ビバップ→イーブン(For Art)


④1950年代~ポストバップ→イーブン(For Art)


③と④を分けたのは③の時代、つまりビバップ全盛期は
まだスィングジャズの名残があり、録音時期や演奏者によっては
バウンスしてる場合が多かったりするので、『過渡期』と『革命後』
と言う意味合いで分けました。
勿論、1950年代以降もバウンスする曲は沢山ありますが、
それはイーブンとバウンスと選択肢があった上でバウンスしている訳であって、
デフォルトでバウンスしている訳ではないのです。

口語と文語、タメ口と敬語のようなものでしょうかね。

『楽しくいこうぜ!』と言うときは1950年以降現在もバウンスします。
『ちょっと聞いてくれないか』とメッセージがあるときはイーブンでしょう。

さてこれまで8分音符の符割り的な(時間的な)話しかしてきませんでした。

『モダンジャズ以降、8分音符はバウンスしない』
それはわかった。
ではミディアムテンポで8分音符をイーブンでプレイしてみるとどうでしょう?
みなさんバウンス無しでスウィングできましたか?
スィングできた人は耳が良い人です。

私はジャズを始めたばかりの大学1年生の頃、
イーブンでプレイしたら全くスウィングしませんでした。
自分だけ時間が止まり、リズムセクションから解離し、
自分は別の空間に無関係に存在しているかのような感覚になりました。

そこでジャズ研では当たり前のことでしょうが、
私はソニー・ロリンズのMoiritat (Mack the Knife)を完全コピーしてみました。
そっくりに吹けるように。続いて同じアルバムのStrode Rode、
さらに St. Thomasもコピーして真似して吹きました。
CDと同時シンクロして吹けるようになるまで。

『毎日20回シンクロさせて吹かないと帰らない』
と決めて修行のように日課にしておりました。
おかけで秘密が解りました。イーブンでもスウィングさせる秘密です。

それは『アーティキュレーション』です。
ジャズのフレージングでアーティキュレーションは非常に大事です。
フレーズのどの音にアクセントを付け、どの音をミュートしたり、滑らかにプレイするか?
これこそがイーブンになった時に非常に大事になるのだ。と解ったのです。


そしてもう一つは『タイム』です。テンポではありません。
タイム感です。タイムと言うのは音の存在する時間軸の細かい座標です。
テンポは基準ですがタイムとはそのテンポに対してどのくらいの位置に音を置くのか?
という尺度のようなものです。
ジャストのテンポに対して突っ込み気味なものを
アドヴァンスもしくはバイト(噛む、食う)と言います。
それとは逆にジャストに対して遅れがち、重たい感じをレイドバックと言います。
もたり気味と言う事です。
このタイム感と先ほどのアーティキュレーションがあいまって、
イーブンでもグングン気持ちよくスウィングするのです。

タイムはテンポやその時のリズムセクションのグルーヴのパターンによりますが、
アーティキュレーションには大まかな法則、掟があります。
これは私のレッスンでジャズの初歩的ルールとして教えておりますが今回は割愛いたします。
(レッスンは有料ですので)
ちなみにこのアーティキュレーションとタイム感は
その後のロックやファンクなどの8ビートや16ビートでも
全くそのまま使えるテクニックですので是非マスターするとよいでしょう。
今日現在でもYoutubeを見るとモダンジャズでシリアスな曲であるにも関わらず
場違いな3連符でチャンカチャンカバウンスしながらをドヤ顔でプレイしている
若いプロ奏者やプロ講師を見ます。

勿論、そういう人に限ってアーティキュレーションはかなりデタラメだったりします。
プレイヤーなら自己責任ですから構いませんが、
講師の場合はその生徒さんがかわいそうになってしまいます。
『この人に教わったら生徒さんも8分音符をチャンカチャンカ吹いちゃうんだろうな』
と残念な気持ちになります。
どうか勘違いしているプロ講師も、
ブラバン出身のアマチュアジャズプレイヤーも
ミュージックエイトの誤った呪縛から解放されて、
偉大なジャズマンが残した音源をちゃんとあるがままに聴き取って、
真実に気が付いてください!!